少子高齢時代の申し子? 需要高まる「空き家管理サービス」。

 総務省の『平成25年住宅・土地統計調査』(5年に一度実施)によると、全国の空き家数は820万戸で5年前に比べ63万戸増。総住宅数に占める空き家率は13.5%と0.4ポイント上昇し、過去最高を記録。実に、7軒に1軒が放置状態ということになります。
 空き家の増加は、ゴミ類の不法投棄、家屋の倒壊や破損による危険など、衛生上、景観上の周辺環境への悪影響に加え、不法侵入や放火といった犯罪面の住民不安を生み、今や社会問題化しています。

 そこで、ついに国や自治体が“空き家放置対策”に本腰を入れ始めました。まず昨年11月、「空き家対策特別措置法(空き家法)」が成立(施行は2015年5月)。倒壊の危険がある“特定空き家”に対して、市町村が所有者に解体・修繕指導を行い、従わない場合は行政代執行で解体できるというもの。さらに、空き家を生む最も大きな要因とされてきた固定資産税の軽減措置にもメスが入りました。物件が建ってさえいれば、税金が更地の6分の1に軽減されるという優遇措置が、今後、空き家と認定された場合は、これまでの6倍の固定資産税が課せられます(実施は2016年度以降予定)。

 空き家は、売れない・貸せない・壊せない“負動産”だ、などといわれる一方で、その深刻化する事態を商機と捉え、「空き家の管理代行ビジネス」に参入する事業者が急増しています。

 各社、サービスの内容や料金体系などは若干異なりますが、基本は、居住していない一戸建てや分譲マンションを定期的に巡回して、郵便物・施錠・庭木・雑草などの確認、通気・通水、水漏れ・雨漏り・カビのチェック、簡易清掃などを行い、オーナーに報告するサービスです。

 今年6月から「空き家巡回サービス」を新事業としてスタートさせた[京王電鉄]は、沿線住宅地の価値向上が狙い。戸建て月1回5,000~9,000円、マンション7,000円。他に、東武鉄道、小田急電鉄、相鉄なども沿線の空き家対策の強化に乗り出しています。

 [三井不動産リアルティ]が昨年から始めた「空家・空地巡回サービス」は、戸建て月1回5,400円からと、戸建て・マンション7,650円の2タイプ。

 今年5月から近畿2府3県で「空き家巡回サービス」を2社協同で始めたのは、[日本住宅流通](契約締結担当)と[大和ライフネクスト](巡回業務担当)。戸建て月1回9,720円、マンション5,400円。

 空き家ビジネスの最大の課題は、採算性です。まして、新規参入が増えれば、価格競争に陥ることが予想されます。まず、所有者の間に、空き家は適正に管理する義務があるのだという意識が広がることが、ビジネスとしての突破口が開ける必須条件といえそうです。ちなみに、空き家率が高いのは、1位山梨県、2位~5位が四国4県。逆に空き家率が低いのは、宮城県、沖縄県、山形県の順でした。

※参考:
総務省統計局        http://www.stat.go.jp/
京王電鉄           http://www.keio.co.jp/
三井不動産リアルティ    http://corp.mf-realty.jp/
日本住宅流通        http://www.jyutaku.co.jp/
大和ライフネクスト      http://www.daiwalifenext.co.jp