高齢化社会を背景に、根強い人気の「訪問販売」

いつでも、どこからでも手軽に買い物ができるネット通販全盛のご時世に、「訪問販売」(以下、訪販)が根強い人気を保ち、健闘しています。
ピークだった頃(1996年)と比べるとほぼ半減しているとはいえ、その売上高はテレビ通販の約3倍にも及びます(日本訪問販売協会)。ここ3~4年は、右肩上がりに伸長することはない代わりに急激に落ち込むこともなく、堅実に横ばい状態を維持。その背景には、高齢化があります。近くに店舗がない、出歩くことがむずかしい、車を持っていない、などといったいわゆる“買い物難民”をはじめ、大手スーパーなどでの買い物は味気ないし、セルフレジにうまく対応できないなどというシニアにとっては、自宅に居ながら販売員と会話しながらゆっくり買い物ができる訪販が、貴重な存在として再び見直されているのです。

古くは“富山の薬売り”の行商がルーツの訪販ですが、その売れ筋商品の変遷が、そのまま時代の変わりようを映しているようです。
20年前と変わらず売り上げ好調なのは、「化粧品」「健康食品」「清掃用具」。この順のままでトップ3は不動です。他に、「住宅リフォーム」「建物清掃」「下着」「衣料品」など。最近は、「電力」「飲料水」「太陽光パネル」といった商品が目立ちます。逆に、「学習教材」や「宝石・貴金属」「美容器具」「寝具」などは、近年、やや不調。

訪販事業者は、単に商品だけではなく、様々な付加サービスを併せて売るという、“お得感販売”を打ち出しています。
地域密着型の家電販売チェーン[コスモス・ベリーズ]は、“ずっと、あなたの電気係です”をモットーに、大型家電の設置サービスや修理などはもちろん、家電の“お困りごと解決サービス”の提供で業績を伸ばしています。
[ダスキン]の訪販は、高齢化社会と直結した「メリーメイド事業」を展開中。シニアの“困りごと相談サービス”の提供拠点を整備しています。
[メガネスーパー]では、眼鏡や補聴器の移動店舗型訪販に積極的。全国16カ所に拠点を設け、検査機材を積み込んだ訪販専用車両で出張訪問し(出張料金は無料)、店舗と同様の検査、微調整を行います。昨年度の訪販件数は、前年比で7倍にも増えているとのこと。

今年6月には、「改正消費者契約法」によって規制が強化されるなど、訪販にまつわるトラブル回避のための法整備も進められています。65歳以上の人口がすでに全人口の4分の1を超えているという現状を背景に、これからの訪販はますます、家庭の玄関先という“個の販路”にとどまらず、老人ホームなどの高齢者向け集合住宅や施設が有力なお得意様となると思われます。

※参考:

公益社団法人 日本訪問販売協会     http://jdsa.or.jp/
経済産業省               http://www.meti.go.jp/
コスモス・ベリーズ           http://www.berrys.co.jp/
ダスキン                http://www.duskin.co.jp/
メガネスーパー             https://www.meganesuper.co.jp/
日経MJ(2017年3月3日付)