“デジタル耳”には新鮮です。再発見、「カセットテープ」の魅力。
デジタル化が進んで音楽がデータになってしまった時代に、あの忘れられかけた存在の「カセットテープ」が、再燃の兆しを見せています。
2年ほど前から世界的にカセットテープ市場が賑わいを増し、騒々しくなってきました。
米国の老舗カセットテープメーカーの2015年の売り上げが、1969年の創業以来、最高を記録。英国では、20万本まで落ち込んだカセットテープの売り上げが、2015年には200万本まで復活。
カセットテープの生産を続ける[日立マクセル]は昨年、70年代の人気モデル「UD」シリーズの復刻版を限定発売。
2014年に渋谷にオープンした「HMV record shop」での2015年のカセットテープの売り上げは“レコードの比じゃないくらい伸びている”(店長談)とのこと。
カセットテープ専門のオンラインストア「Tape School」が開設され、[ビームス]の
音楽部門「BEAMS RECORDS」では、2015年にカセットテープを集めた企画展を開催。
主な大手メーカーが生産から手を引く中、[ビートソニック](愛知)は2014年から車載用カセットデッキの製造・販売を復活。
[ビックカメラ]は2016年、同社オリジナルラジカセ(ラジオ付カセットレコーダー)の販売を開始。
2015年にオープンしたカセットテープ専門店「waltz(ワルツ)」(東京)には国内外の音楽テープが約5000本、カセットテープをリアルタイムで知らない10代から70代まで幅広い客層が訪れています。
カセットテープには、形のある“モノ”としての魅力があります。テープをラジカセにセットし、再生ボタンをガチャッと押すとテープが回り始めるのが見える……触れることのできないデジタル音源を相手にストリーミングするのとは対極的。この、ひと手間を要する行為がデジタルネイティブの世代には、“めんどくさいけど、カッコいい”ということに。たしかに、曲をスキップできないし、ノイズも混じっています。繰り返し聴いているうちにテープが伸びて音が劣化してきます。しかし、そんなデメリットさえも雑味となりテープの魅力の一つに。圧縮されたデジタルの音質を聴き慣れた耳には、むしろ高音がカットされた、やわらかくまろやかな音質が心地よく感じられるのかもしれません。
デジタルへのカウンターカルチャー(対抗文化)的な側面が強い、今回のカセットテープブーム。どうやら、世の中は、デジタル化が進めば進むほど、その一方でアナログへの回帰が加速するようです。ならば、次なる復活劇の主役は、「ビデオテープ」!?
※参考:
日立マクセル http://www.maxell.co.jp/
HMV record shop 渋谷 http://www.hmv.co.jp/
Tape School http://tapeschool.com/
BEAMS RECORDS http://www.beams.co.jp/
ビートソニック http://www.beatsonic.co.jp/
ビックカメラ http://www.biccamera.com/
ワルツ http://waltz-store.co.jp/
経済産業省 http://www.meti.go.jp/
朝日新聞(2016年11月15日付)