ペットボトル容器の軽量化。環境配慮を目的に、0.1gの攻防を展開。

 缶、紙、びんなどの飲料用容器全体に占めるペットボトルの割合が約7割に達し、今や容器の主役に躍り出ました。近年は、消費者の環境意識の高まりに応じ、飲料各社はペットボトルの改良にしのぎを削ります。特に、ペットボトルの原料となる「ペット」(PET=ポリエチレンテレフタレート樹脂)の使用量を削減できれば、製造時や廃棄時に発生するCO2の排出量を削減できるということで、ボトルの“軽量化”が大命題となっています。

 軽量化競争の背景には、“充填”の進化があります。かつては、90℃に熱した状態で詰める“高温充填”が主流だったため、ボトルには高温・高圧に耐えうる頑丈さが求められ、軽量化は難しいとされてきました。ところが2000年代に入って“常温無菌充填”が普及。高温で殺菌した飲料を冷却し、あらかじめ殺菌されたボトルに無菌室で常温充填できるようになると耐熱性が不要となり、薄くて軽いボトルが実現。各社、競って開発合戦が始まり、現在では、飲料メーカー各社が自社工場内でペットボトルの設計から製造までを手掛けるようになりました。

 2013年、[サントリー]は「天然水」で29.8gという、2ℓタイプで初めて30gを切る国内最軽量(当時)のペットボトルの開発に成功しました。しかし2015年2月、[コカ・コーラ]が、「爽健美茶」などを対象に29.0gという“ペコらくボトル”を打ち出し、軽さだけでなく、握りやすさ、注ぎやすさ、そして飲用後の潰しやすさ(正確には、しぼりやすさ)まで考慮した画期的軽量ボトルを誕生させました。[サントリー]の2年間続いたトップの座を奪った[コカ・コーラ]でしたが、2カ月後の2015年4月、今度は[キリン]が「アルカリイオンの水」で28.9gという最軽量(2015年7月現在)のペットボトルの導入を開始。軽量御三家ともいえる3社は、最軽量トップの座を巡って、わずか0.1gの争いに突入したのです。

 飲料各社が軽量化にこだわる背景には、環境配慮への取り組みをアピールすることで他社との差別化を図り、消費者からの支持を得たいという思惑があります。中身の飲料自体とは別の、環境負荷削減が新たな競争の軸となれば、消費者はそれをもう一つの商品価値として認め、支持が得られることが期待されます。ペットボトルの軽量化やリサイクル技術の追求は、もはや飲料メーカーがグローバルで勝ち抜くための必須要素になっているといえます。

※参考:
PETボトルリサイクル推進協議会  http://www.petbottle-rec.gr.jp/
サントリー食品インターナショナル http://www.suntory.co.jp/
日本コカ・コーラ            http://www.cocacola.co.jp/
キリンビバレッジ            http://www.kirin.co.jp/
日経エコロジー(2015年5月号)
日経産業新聞(2015年6月17日付)