ライセンス契約の打ち切り。屋台骨を失ったとき、企業は?

 昨春、英国の高級ブランド[バーバリー社]と[三陽商会]のライセンス契約が、今年6月で打ち切られるというショッキングなニュースがアパレル業界をかけ巡りました。1970年に契約を結んで45年間。[三陽]にとっては、売上高の半分以上を占める大黒柱ブランドでした。

 海外ブランドの「ライセンスビジネス」とは、海外の有名ブランドを日本の企業が契約して借り受け、商品を開発・販売する仕組みを指します。

 借りる側にとっては、本家ブランド側のチェックが入るとはいえ、ライセンス使用料(売上高の10%程度のロイヤルティ)を払うだけで自社企画の商品に有名ブランドの名を冠して高値で販売できる“おいしい契約”として重宝されてきた一面もあります。貸すブランド側にもメリットはあります。最大の利点は“流通”です。海外のメーカーにとって、日本で一から自前の流通網を築くには時間と労力を要します。ライセンス契約を結ぶことで、着実に販路が確保でき、大幅な投資コストの削減につながります。

 しかし、[バーバリー]の例に限らずブランド側は、日本で一定のブランド力が確立されたと見るや、ライセンス供与のメリットは薄れ、10%程度のライセンス料収入では旨みがないと判断して見切りをつけ、自前で日本でのビジネスを本格化しようと考えるようになります。90年代に入ると日本のアパレルとのライセンス契約を解消し、独自に直接日本での運営に舵を切る海外ブランドが増えてきます。

 最たる例は、1998年に[アディダス](独)が、28年続いた[デサント]との契約を一方的に打ち切った“アディダスショック”。その影響で[デサント]は3期連続赤字を強いられましたが、その後、アジアに市場転換して見事業績を回復させました。

 2004年にはスーツケースの[サムソナイト](米)が[エース]と、2005年に[アニエスベー](仏)が[サザビーリーグ]と、2007年に[ポロ・ラルフローレン](米)が[オンワード樫山]と、それぞれ契約解消に至っています。新しい事例では、今年3月、[ゴディバ](ベルギー)が、43年続いた[片岡物産]との契約を終えました。

 商社が海外ブランドを買収するなど、対抗する動きも目立っている昨今。もはや、海外ブランド頼みの成長モデルが通用しない時代になっているのかもしれません。ライセンス契約をめぐる一連の騒動は、日本のブランドビジネスが抱える構造問題をあらためて浮き彫りにしたようです。

※参考:
三陽商会      http://www.sanyo-shokai.co.jp/
朝日新聞(2014年6月10日付/同2015年1月12日付)
日経МJ(2015年1月23日付)