一人がラクチン! 「ぼっちサービス」の市場、拡大。
いわゆる「おひとりさま」向けサービスは、いまやブームを超えて定着した感があります。この現象を支えているのは、言うまでもなく“ひとり暮らし”の人たちです。すでに2010年時点で、“夫婦+子供”世帯を上回ってしまった単身世帯。未婚化、晩婚化、熟年離婚、夫婦の死別などの増加が「おひとりさま」を生み出す要因といわれています。
当然、新たな商機として、「おひとりさま」ニーズに照準を合わせたビジネスが様々な分野で花盛り。映画館、ラーメン店、カラオケ、マンガ喫茶、旅行、などといった定番の他にも、「おひとりさま」御用達の新種が続々登場しています。
団体スポーツなのに、一人でフラッと来て参加できる施設が注目されています。“個人参加フットサル”を運営するのは、「アイリ(AIRI)」(埼玉県川口市)。3つの地区(渋谷・日本橋・千駄ヶ谷)ごとに開催日や時間が設定されており、自分の希望する日時を申し込むだけで参加できます。一回につき、男性2,000円、女性1,000円。人数を集めたり、場所を確保したりという団体競技特有の手間は一切不要。練習もありませんし、ミスをしても怒られることもありません。
ユニークなところでは、インドアのビーチバレーコートが出現しました(コナミスポーツクラブ府中)。週3回、20時から個人参加型のビーチバレーを実施(1時間1,080円)。その日に来館した人を、2人制4人制にチーム分けして試合を行います。
カラオケ店での“一人カラオケ(ヒトカラ)”とはひと味ちがう、一人用カラオケボックスがゲームセンター内に登場。「ちょいKARA」(タイトー)という、電話ボックスのような形状にカラオケ最新機種が装備されており、料金は1曲につき100円のみ。
2012年、京都大学の学食に設けられたのが、大きなテーブルを衝立で区切っただけの一人用の席。これが“ぼっち席”と呼ばれ、学生たちに好評で、すっかり定着。神戸大学へも波及しました。これをきっかけに、“おひとりさま=ぼっち”として言葉が一人歩きし始めました。
一人用の「ミニこたつ」や「一人キャンプ」のための道具。ビアガーデンに一人用の席を設けた「ヒルトン東京」など、「おひとりさま」に的を絞ったサービスは、枚挙にいとまがありません。
“ぼっち消費”が、マーケティングやモノづくりのキーになりつつある昨今。ビジネス的には面白い市場にちがいありませんが、「おひとりさま」の居心地が良くなりすぎると、ますます非婚化、そして少子化に歯止めがかからなくなるという皮肉なことになるのでは……。
※参考:
アイリ http://www.airi-inc.jp/
コナミスポーツクラブ府中 http://www.konamisportsclub,jp/
タイトー https://www.taito.co.jp/
朝日新聞(2013年9月14日付)
経МJ(2014年5月19日付)