発泡酒よ再び!「プリン体ゼロ」が、ビール市場を救う?

 “ビール類”と呼ばれる中には、いわゆる“ビール”と“発泡酒”“第3のビール”の3種類が含まれ、それぞれ原材料や製法によって酒税額が異なります。350ml缶の場合、麦芽の割合が3分の2以上の“ビール”が77円、麦芽3分の2以下の“発泡酒”(1994年登場)が47円、そして麦芽を使用しなかったり発泡酒に蒸留酒を加えたりする“第3のビール”(2003年登場)が28円となっています(2014年10月現在)。

 2014年1~9月のビール類出荷数は、2005年以来、10年連続で過去最低を更新しましたが、そんな中、ひとり気をはいたのが“発泡酒”でした。12年ぶりに前年実績を上回ったのです。そこに至るまでの道のりは、意外なきっかけによるものでした。

 健康志向の高まりを受け、各社、糖質やプリン体に配慮した“機能系ビール”に注目し、開発に着手していました。そこに登場したのが“世界初のプリン体ゼロ・糖質ゼロ”を謳った[サッポロ]の「極ZERO」でした。“第3のビール”として2013年6月に発売されるや大ヒットに。しかし2014年1月、国税庁から、製法に関して“第3のビール”ではない可能性がある、と思わぬ指摘を受けると、5月には製造を中止してしまいました。そして7月、格闘技の階級をシフトするかのように、今度は“発泡酒”として再発売に踏み切ったのです。商品名はそのままにジャンルを変えるのは前代未聞のことでした。

 価格が上がる分(約20円)、売り上げの落ち込みが懸念されましたが、それに反して予想を上回る好調な売れ行きを記録。一連の“騒動”が、かえって“プリン体ゼロ”の知名度を高める結果となったようです。

それはまた他社の商魂を刺激することとなり、9月に、なんと3社同時に、プリン体・糖質、ダブルゼロの“発泡酒”を発売するという異例の事態を招きました。「淡麗プラチナダブル」(キリン)、「スーパーゼロ」(アサヒ)、「おいしいZERO」(サントリー)の新商品たちを迎え撃つ「極ZERO」—-“発泡酒戦争”の火ぶたが切られました。

 この事態によって息を吹き返したのが、このところ首位を奪われ独り負け状態だった王者[キリン]でした。実は[キリン]は、“発泡酒”市場で「淡麗」ブランドが16年連続で売り上げトップを走り、機能系ビールのパイオニア的存在だったのです。いわば“お家芸”のステージで、競合3社と相まみえる格好になったわけです。

 尿酸値が気になる人は“プリン体”を、ダイエット中の人は“糖質”を気にしながら楽しむビール。この“発泡酒ゼロゼロ戦争”の行方はまた、“機能”と“うまさ”の戦いであるともいえます。

※参考:
サッポロビール           http://www.sapporobeer.jp/
キリンビール            http://www.kirin.co.jp/
アサヒビール            http://www.asahibeer.co.jp/
サントリーホールディングス   http://www.suntory.co.jp/
朝日新聞(2014年8月30日付)
日経МJ(2014年9月12日付)