増える需要、足りない人材。政府やドラマが後押し、「家事代行サービス」
共働き世帯の増加、さらに高齢者世帯や単身者世帯も増えていることなどを背景に、近年、家事の担い手の多様化が進んでいます。その担い手の一つが、「家事代行サービス」です。
「家事代行サービス」とは、家庭における日常的な家事全般(掃除・洗濯・アイロンかけ・食器洗い・買い物など)を、派遣されたスタッフが依頼者に代わって行うサービスのことです。専門技術を有し、特殊な道具や洗剤などを使用する「ハウスクリーニング」や、スタッフ個人と直接雇用契約を結ぶ「ハウスキーパー(家政婦/お手伝いさん)」などとは異なります。
特別な免許や設備が要らないことから、事業参入へのハードルは低く、他分野からの新規参入組が目立ちます。電鉄、電力、不動産、家電、警備、運送など、まさに群雄割拠の様相、その数は枚挙にいとまがありません。
基本的に、部屋の間取りと家族人数を元に、作業内容についてヒヤリングを行った上で料金が決められます(交通費は別途)。平均額(東京)は、1時間4000円強。通常2時間からの利用なので、1回6000~8000円程度。
この業界は一方で、主婦層を中心とした新たな雇用を生み出しています。育児を一段落した女性の社会復帰として家事のスキルを活かせる点や、すきま時間を活用して収入が得られる点など、業界の慢性的なスタッフ不足を補う意味でも期待されています。ちなみにTBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で、ヒロインの家事代行として働く姿が共感を呼んだせいか、このドラマを監修した業界最大手の「ベアーズ」には、スタッフの応募が平常の1.5倍も寄せられたとのこと。
日本人男性の家事負担率が18%という調査結果が出ています。1位はスウェーデン(42.7%)で、日本は最下位でした。政府(経産省)も“女性が輝く社会”の推進には家事負担の軽減が不可欠として、「家事支援サービス推進協議会」を2015年に立ち上げ、家事代行サービスの利用促進を国を挙げて後押し。なにしろ、家事代行サービスの存在を「知っている人」が70%もいるのに、「現在利用している人」がたったの1%しかいない現実(「利用したことがある人」は3%)。料金の高さに加え、他人が自宅に入ることへの抵抗感がネックとなっているようです。
政府は今後、このサービスの市場規模を、2012年度の980億円に対し、約6.1倍(6000億円)まで膨らませると目論んでいますが、はたして……。
※参考:
全国家事代行サービス協会 http://www.kaji-japan.com/
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
経済産業省 http://www.meti.go.jp/
ベアーズ http://www.happy-bears.com/
朝日新聞(2016年10月9日付/同12月26日付)
日経МJ(2016年12月9日付)