未知との遭遇! エンタメ市場の最強兵器、「体験型劇場システム」上陸。
苦戦が続く映画業界。大画面テレビやスマホ、タブレットなどの普及によって、場所も時間も選ばずに映画を楽しめる時代となったいま、わざわざ映画館に足を運んでもらうには家庭や端末レベルで体験できない新たな価値の提供が求められています。そこに登場したのが、「4D」による次世代の体験型劇場システム。3Dのように映像が飛び出てくるだけでなく、スクリーンの中の世界を共に体感できるというものです。
[TOHOシネマズ]が今春、「ららぽーと富士見」(埼玉)に導入したのは、2013年に米国[メディアメーション社]で開発された「MX4D」システム。シーンに連動して座席が上下・左右・前後に揺れて動くほか、下から突き上げるような衝撃や地響きの動き。風も、そよ風や向かい風、突風と多彩。天井から雨が降ったり、水しぶきが飛び散って嵐の渦中に。強力なストロボ効果で雷鳴や爆発シーン。劇場内に人工の雪を降らせたり、霧や煙も演出。シーンに合わせて香りも漂います。さらに、足元や首筋に何かが触れたような感覚とか、背中をつつかれるような感覚など、ホラー映画の恐怖感を増長させる効果も。
作品ごと、シーンごとに専門のプログラマーが1カ月かけて特殊効果を作り込んでいきます。この仕掛けが技術者のウデの見せどころで、もう一つの“作品”ともいえます。料金は、通常料金1,800円にプラス1,000円で2,800円。体験するには数々の注意事項が設けられています。身長100cm未満の子供、高齢者や妊娠中の人、車椅子の人、怪我をしていたり、心臓・背中・腰・首などに障害のある人、乗り物酔いしやすい人、泥酔している人、小児を膝に乗せての鑑賞は不可。水に濡れることもあるので服装には要注意。上映中にトイレに立つのは難しいのでトイレは上映前に、など。同社は今年度中に、新宿と六本木の映画館への導入が決定しています。
“観る”から“体感する”へ。五感を刺激し、映画というよりテーマパークのアトラクションのノリに近く、映画館でしか体験できない“映像+ライブエンタテインメント”な上映システム。この先端技術による特殊演出効果が、映画館への集客にどれほどの効き目を発揮するか——映画業界ではいま、大きな期待が寄せられています。
※参考:
TOHOシネマズ https://www.tohotheater.jp/
日経産業新聞(2015年4月15日付)