泊まって味わう「古民家」の活用。地域も潤って、“一泊二鳥”
「古民家」を再生し、地域の新たな観光資源として有効活用しようとするビジネスが、全国あちらこちらで本格化しています。
「古民家」とは、1950年以前に建てられた築50年以上の木造住宅のこと(全国古民家再生協会)。総務省の「住宅・土地統計調査」(5年ごとに実施)によると、2013年時点での古民家の数は全国で約157万戸。10年前(2008年)の調査で約180万戸あった古民家が、5年間のうちに約23万戸減少したことになります。増えているかと思いきや、逆に減っているのです。これは、古民家の多くが、空き家となって解体を余儀なくされたからです。古民家の再生事業が、自治体にとっては空き家対策という側面も担っているといえます。
こうした背景の中、インバウンド需要も視野に入れた古民家再生の動きが、今年に入ってにわかに活気づいています。
楽天グループの[楽天ライフルステイ]は、民泊仲介大手の[米ホームアウェイ]、[全国古民家再生協会]と協力して、全国に点在する古民家を改装して民泊施設に転用するサービスを開始しました。今年度に、まず30棟の開発を目指します。
千葉県佐原では、築160年の古民家を改修した宿泊施設「佐原商家町ホテル」が開業。京葉銀行、佐原信用金庫など、官民6者の連携で設立した町おこし会社[ニッポニアサワラ]が事業を束ねます。4棟でスタート、来春までに8棟に増やす計画。
茨城県桜川市は、[常陽銀行]や民泊仲介・運営の[百戦錬磨](宮城)、[凸版印刷]と連携協定を結び、同市の古民家を民泊に活用して地域の振興につなげます。
千葉県の[小湊鉄道]は、地元の古民家宿泊施設運営会社[人と古民家]と組み、ゴルフと古民家宿泊がセットのレジャープランを打ち出しました。
古民家が生まれ変わるのは、宿泊施設だけではありません。
築80年の古民家が食堂に(宮城)、築100年の古民家がレストランに(京都)、築140年の古民家がカフェに(長崎)、築130年の古民家がシェアオフィスに(福井)……古民家の再生事例は枚挙にいとまがありません。
政府は2016年、20年までに200地域で古民家などを活用した町づくりの整備計画を発表しました。また、地方銀行も地元の経済活性化のため一役買っており、昨秋時点で、古民家再生事業への取り組みは27行、34事例に上っています(全国地方銀行協会)。
日本を訪れる外国人観光客は、いまや、東京、大阪、京都といった“ゴールデンルート”に飽き足らず、日本ならではの田舎の景観や何でもない日常的な暮らしなど、“体験型”にシフト。古民家や町家など、歴史的な建造物に泊まることに憧れを抱く人が増えており、まさに、古民家ビジネスにとって格好の追い風状態といえます。
※参考:
一般社団法人 全国古民家再生協会 http://www.g-cpc.org/
総務省 http://www.soumu.go.jp/
楽天ライフルステイ https://www.rakuten-lifull-stay.co.jp/
佐原商家町ホテル https://www.nipponia-sawara.jp/
小湊鉄道 http://www.kominato.co.jp/
一般社団法人 全国地方銀行協会 http://www.chiginkyo.or.jp/
日経МJ(2018年4月23日付/同6月6日付)