若者の果物離れ。実は、“健康”にも“経済”にも深刻な問題なのです。

若い世代の“〇〇離れ”現象がさまざまなところで起きていますが、近ごろでは“果物離れ”が進んでいるようです。

そもそも、若者に限らず、日本人の果物の摂取量は諸外国に比べてもかなり少なく、一人当たりの一日の摂取量は欧米の3分の1から半分くらいの量。先進国の中でも下位クラスの“果物後進国”といえそうです。

ある調査によると、果物をほぼ毎日食べるという人は、70代以上で約50%なのに対し、20代以下は10%未満にとどまります。

大きな原因の一つに、“めんどくさい”があります。皮をむいたり、切り分けたりする手間と食べた後の片づけが面倒。

また、核家族化や一人暮らしの増加に伴い、スイカやメロンなど、丸ごと1個を食べきるのが難しくなり、自ずと生の果物ではなく加工品(ジュース、ゼリー、カットフルーツなど)で果物を“摂ったつもり”とする人が増えているのも原因の一つ。

“日本の果物は世界一美味しいが、世界一高い”と、日本で暮らす外国人たちが口をそろえて言うように、値段の高さもネックとなっています。

さらに、かんきつ系など、酸っぱいのが苦手という日本人全体の“酸味離れ”も一因に。

このように、若者の“果物離れ”には複合的な要因が重なり合っていて一筋縄ではいかないようですが、業界はなんとかこの流れを食い止めようと、あの手この手の打開策を試みます。

[果物のある食生活推進全国協議会]は、日頃から果物を食べることは生活習慣病の予防につながるとして「毎日くだもの200グラム運動」を展開。

また、[日本園芸農業協同組合連合会]では、会社や学校のデスクでもみかんを!と提唱。「デスクdeみかん」というみかんの消費拡大活動を、全国のみかん産地と一体となって展開しています。

さらに、消費者のニーズに合わせた品種改良も積極的に行われています。皮のむきやすい温州みかんと甘みの強いオレンジをかけ合わせた「はれひめ」、種なしで皮ごと食べられるブドウ「シャインマスカット」、渋皮と身が離れやすい栗「ぽろたん」など、数々の“手間なし果物”を開発しています。

シニア頼みの現状では、果物産業の先細りは明らか。国内市場のうち国産品は4割ほどで、TPPが発効されれば輸入品との競争は激しさを増し、生産農家の経営を圧迫し、淘汰され、それは同時に生産量の減少を招き、国産の果物を食べる機会はさらに奪われることに。ただ、“もっと果物を食べるようにしたい”とする人が4割以上もいる(「中央果実協会」調べ)という潜在需要の存在が、一筋の光明といえるかもしれません。

参考:

総務省              http://www.soumu.go.jp/
JC総研              http://www.jc-so-ken.or.jp/
果物のある食生活推進全国協議会  http://www.kudamono200.or.jp/
日本園芸農業協同組合連合会    http://www.nichienren.or.jp/
中央果実協会           http://www.kudamono200.or.jp/

日本経済新聞(2016年8月28日付)