“黒子”からの脱皮。「段ボール」自身が主張し始めました。
私たちの暮らしの様々なシーンに関わり、当たり前のように存在している「段ボール」。あまりにも“黒子”的で、ついそのありがたみを忘れてしまいそうになりますが、その段ボールにいま、成長産業としての熱い視線が注がれています。
急増するネット通販を背景に物品の輸送頻度が高まり、段ボールの需要も拡大。2017年度の国内生産量は10年ぶりに最高記録を更新する見込みです(全国段ボール工業組合連合会)。その背景には、業界を挙げての開発努力があったことは見逃せません。水に弱く、強度も見込めないという段ボールの弱点を克服しようと、防水加工を施した「耐水・撥水段ボール」や多重構造で丈夫にした「強化段ボール」などを次々と開発。 さらには、燃えにくい防炎タイプ、特殊なインクやニスを使って害虫を寄せ付けないタイプ、サビから守るタイプ、静電気を帯電しないタイプ、果物や野菜の水分の蒸発を抑える保冷・鮮度保持タイプなどの機能性段ボールの他、テーブルやイスといった家具や避難所などでの床敷きシートやパーティション、簡易ベッドまで、段ボールの活躍の場は広がっています。
いま段ボール各社が最も注力して競い合っているのが「SRP(シェルフ・レディ・パッケージ)」という、開封や陳列の手間をいかに軽減できるかの技術。段ボール最大手の[レンゴー]は、独自に「RSDP(レンゴー・スマート・ディスプレイ・パッケージング)」と名付けた革新的な商品を開発。ミシン目を入れ、誰でも素早くワンタッチで組み立て・折りたたみを可能に。表面には商品ロゴなどがプリントされており、そのまま店頭に並べれば販促ツールに早変わりする汎用型段ボールです。“輸送箱=陳列箱”の導入によって、店頭での作業時間の大幅な削減に貢献します。
段ボール生産量の世界1位は中国、2位はこれまでトップだった米国、3位が日本です。国内の包装資材の約25%を占める段ボールの需要動向から、景気の先行きを占うことができるといわれるほど、その動きはGDP(国内総生産)とほぼ連動しています。
100%再生可能な天然素材で“リサイクルの優等生”と呼ばれている段ボール。単なる梱包資材から、新たな存在価値を求めて、段ボール自身が主張する時代が訪れたようです。
※参考:
全国段ボール工業組合連合会 http://zendanren.or.jp/
レンゴー http://www.rengo.co.jp/
王子ホールディングス http://www.ojiholdings.co.jp/
大王製紙 http://www.daio-paper.co.jp/
トーモク https://www.tomoku.co.jp/
日本製紙グループ http://www.nipponpapergroup.com/
特種東海製紙 https://www.tt-paper.co.jp/
日本経済新聞(2016年12月8日付)
日経産業新聞(2017年1月5日付)