未体験の若者にも響いて、「アナログレコード」、復活の兆し。

 「アナログレコード」(以下、レコード)が、「CD」に音楽ソフトの“王者”の地位を譲ったのが1986年のことでした。それ以来、年を追うごとにレコードの売り上げは落ち続け、世界的には2006年(約34億円)に、日本国内では2010年(約1億7,000万円)に、それぞれ底を打って、そのまま消えゆくかに思われました。ところが数年前から欧米を中心に再びレコードブームが沸き起こり、2013年の世界のレコード売上高は前年比27%(約220億円)の伸びを記録(IFPI=国際レコード産業連盟)。復活の波は日本にも上陸し、2013年の国内売上額が4億800万円にまで回復しました(日本レコード協会)。

 今回の復活劇は、単に中高年層を狙った往年の名盤再リリースにとどまりません。若手ミュージシャンたち、例えば、木村カエラ、きゃりーぱみゅぱみゅ、パフューム、チームしゃちほこから、デヴィッド・ボウイやポール・マッカートニーなどのベテランまで、年代を超えて新譜をレコードでリリースしている点が注目されています。
 この世界的なムーブメントを商機ととらえ、様々な動きが見られます。

 2014年8月、[ローソンHMVエンタテイメント]では初となる、レコードとCDの中古専門店「HMV record shop渋谷」を、かつて“レコードの聖地”と呼ばれた渋谷区宇田川エリアにオープンしました。60~90年代の洋楽LPを中心に、懐かしのドーナツ盤も含め、約8万枚を揃えたほか、レコードプレーヤーやカートリッジなどの関連商品も販売。

 また同時期に、30年ぶりとなるレコードプレーヤーの新製品を発売したのが[パイオニア]。クラブなどで使用するプロ向けターンテーブル「PLX-1000」(約8万円)で、DJ用の高級機投入は同社初でもあります。

 [パルコ]は、レコードを楽しむミュージックカフェ&バー「クアトロラボ」を昨年11月、東京・吉祥寺に開店。5,000枚を超えるレコードコレクションが夜のバータイムを演出します。

 一方、レコード盤製造工場である[東洋化成]では、ここにきてフル稼働の状況が続き、新たなラインの確保もままならないほどの盛況ぶり。

 データでの音楽配信が主流となったいまだからこそ、音に味があって温かく厚みのあるレコードの音質が見直され、心ひかれるのかもしれません。レコード人気再燃の流れは、スローフードのようなトレンドとなって広まり、それに呼応するかのようにレコードを核としたビジネスはますます活発になることが予想されます。

※参考:
IFPI(国際レコード産業連盟)    http://www.ifpi.org/
一般社団法人 日本レコード協会  http://www.riaj.or.jp/
ローソンHMVエンタテイメント    http://www.lhe.lawson.co.jp/
パイオニア               http://pioneer.jp/
パルコ                  http://www.parco.co.jp/
東洋化成                http://www.toyokasei.co.jp/
朝日新聞(2014年7月19日付)
日経МJ(2014年10月8日付)
日経産業新聞(2014年10月21日付)