「在宅介護」を、“食”からケアします。

 “超高齢化社会”を迎えた日本では、2025年には3人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されています。

 そんな状況に伴い、国は、要介護度の高い高齢者でも病院などの施設から在宅介護への切り替えを推進。介護の場が自宅へと移ったのを機に、「在宅介護食」のニーズが一段と高まっています。

 [明治]の小さなカップタイプの流動食「メイバランスMiniカップ」は、たんぱく質、食物繊維、ビタミン、ミネラルなど、体に大切な栄養素を一度に摂ることができると好評。

 [味の素]も、流動食の商品を各種ラインアップしている他、介護食作り応援サイトを開設。管理栄養士による、身近にある食材で楽しく無理せず作れるレシピや、男性にも素早く作れる簡単レシピを医師が紹介するなど、実用的な内容でサポート。

 [ニュートリー](三重県)は、飲み込む機能が衰えた人向けの“嚥下(えんげ)食”のために、こだわりの「ご当地嚥下食ワールド」のサイトを立ち上げました。奈良の“柿の葉寿司”、山梨の“ほうとう”など全国のご当地料理25種を、見た目も味も本物そっくりの嚥下食に整えるまでをレクチャーするというもの。自宅で嚥下食作りのためのとろみ材「ソフティア」の販売やセミナーを積極的に催しています。

 アサヒグループホールディングス傘下の[和光堂]は、在宅介護向けの“おやつ”を開発。昨秋から販売している「しっとりやわらか食感 和風クッキー」シリーズで、一般的なクッキーの約3倍のたんぱく質を含ませて、不足しがちな栄養素をおいしく補います。

 要介護認定者数は、この10年間で1.5倍に増えています(厚生労働省「介護保険事業状況報告」)。この現実はまた、食品メーカーにとって、「在宅介護食」市場が年々拡大を約束された成長マーケットであるとの期待面も併せ持ちます。

 現在の介護食市場が約1,000億円の規模であるのに対し、将来的な介護食ニーズの規模は2兆5,000億円に達すると試算されています。つまり、実際の供給量と潜在的な需要量との間に、大きなギャップが生じているということが言えます。このかい離を埋めるための様々な課題—–例えば、介護食のメニューバリエーションの増加、メーカーごとにバラバラな商品規格の整理、通販中心からスーパーやドラッグストアなどへの販売チャネルの拡大、割高感の払拭といった、介護する側・される側、双方からの切実な願いを確実にクリアしていくことが求められています。

※参考:
明治       http://www.meiji.co.jp/
味の素      http://www.ajinomoto.co.jp/
ニュートリー   http://www.nutri.co.jp/
和光堂      http://www.wakodo.co.jp/
厚生労働省   http://www.mhlw.go.jp/
農林水産省   http://www.maff.go.jp/
日経МJ(2015年10月30日付/同11月27日付)