旅行は“海外”から“国内”へシフト。復活した、「国内観光旅行」。

 年々、その規模を縮めてきた「国内旅行」市場(出張・帰省などは除く)ですが、2011年に底を打ってからは、12、13年と2年連続で拡大を続けています(日本生産性本部『レジャー白書2014』)。復活の要因は、いくつかの要素が複合的かつ有効的に絡み合った結果といえそうです。

 まず経済面。2012年末から始まった“アベノミクス”政策による足元の景況感の高まり。さらに円安が海外旅行の割高感を強め、特に例年、人気の高かった中国・韓国といった近場への海外旅行が、情勢の不安定さや韓流ブームの終息、乗り物の事故などが重なったため敬遠され、その分「国内旅行」へシフトしたと見られます。

 併せて、新規イベントの開催など、国内各地の観光地や関連する企業の“がんばり”も見逃せません。

 昨年の伊勢神宮の式年遷宮や出雲大社の大遷宮。世界遺産登録が決まった「富岡製糸場」「富士山」「和食」。JR九州の豪華列車「ななつ星in九州」に代表される各地の観光列車。大型クルーズ船によるカジュアルな船旅。さらに、大阪では日本一の超高層複合ビル「あべのハルカス」の開業やユニバーサル・スタジオ・ジャパンにオープンした「ハリー・ポッターの魔法の世界」。東京では「虎ノ門ヒルズ」、千住の大型商業施設「ポンテグランデTOKYO」の開業、アマンリゾーツの日本初進出のホテルが大手町にオープンするなど、話題性に富んだ“商品”が目白押しで、都市部への旅行の増加も見込まれます。一方で、地域主体の旅行商品も人気で、工場群のナイトツアーや、ダム、道路などの工事現場見学ツアーなど、新たな切り口で観光資源を創り出す試みも積極的に展開されています。

 人数、消費額ともに2008年のリーマンショック後で最も高い数値が見込まれる2014年の「国内旅行」市場。最近は、LCCで安く行き、豪華なホテルや旅館に泊まる。または、宿泊は廉価なビジネスホテル、食事は高級な店で、といった“メリハリ旅行”の傾向が広まっているようです。
 ご多聞にもれずこの分野でも見られるのが、元気なシニア&若者の“旅行離れ”現象で、国内旅行者数の5割以上を50歳超の世代が占めています。

※参考:
公益財団法人日本生産性本部   http://www.jpc-net.jp/
観光庁             https://www.mlit.go.jp/kankocho/
日本交通公社          http://www.jtb.or.jp/
一般社団法人日本旅行業協会   http://www.jata-net.or.jp/
日経МJ(2014年8月15日付)