服が売れない! 岐路に立つ、「アパレル」再生のシナリオ。

低価格路線の常態化、経費削減、オーバーストア(店舗過剰)、在庫過多、大規模リストラ—–アパレル業界はいま、かつてない激動期を迎え、大苦戦を強いられています。

1990年に約15兆円だった国内の衣料品市場は、2014年には約8兆6000億円にまで縮小(経産省)。直近の2年間では、大手4社だけで1600店舗以上が閉鎖に追い込まれました。

[オンワード]は、不採算ブランドの廃止を決めるとともに今年度は約110店を閉じる計画。

[ワールド]は昨年、全社員の4分の1に当たる500人の早期希望退職を募り、今春には約480店(全体の17%)を閉鎖。さらに10~15ブランドを廃止する方針。

[TSI](旧東京スタイル+サンエイ)も昨年、約500店舗(全体の28%)を閉店。

[三陽商会]は、2017年2月までに140店を閉じる計画で、延べ閉店数は220を数えます。

これらの各社に共通しているのは、長年の“百貨店頼み”の体質。かつて百貨店をメーンステージに高額なブランド志向に浸かっていた消費者は、バブル崩壊を経て、低価格でもそこそこオシャレにファッションを楽しめればいいという傾向に変わってきました。
百貨店への出店を増やし続けたアパレル各社は、そういった消費者の“価格”と“価値”の関係が変化していることへの気づきに遅れをとり、読み切れていなかったといえます。事実、高級品が目玉の百貨店の客離れは著しく、特に主流だった衣料品の売上高はここ5年で2000億円近くも減少しています。

そこに追い打ちをかけるように襲ってきたのが、ファストファッション(FF)の波です。最先端の流行をいち早く取り入れ、短いサイクルで大量生産・大量販売するのが魅力のFF。

[ユニクロ]、[しまむら]、[ZARA](スペイン)、[H&M](スウェーデン)、[GAP](アメリカ)といったFFの特徴は、“SPA”といわれる、自社ブランドの企画・製造から販売までを一貫して行う流通方式を採っていること。卸を通さないローコストが商品価格に反映され、アパレルの世界に価格破壊を起こしました。

そんな実店舗での苦戦を尻目に、ネットでの衣料品販売は絶好調。いまや家電や食品を抑えて、最大の市場規模に成長中で、人気の通販サイトなどは年率2ケタ成長を続けるほどの勢い。

売り方も買い方もめまぐるしく変わり、これまでの常識が通用しない時代。アパレル業界は、ブランドや企業の再編、あるいはセレクトショップの道に活路を見いだすのか—–いずれにせよ、もはや“服が売れない”と嘆いている時ではない。売れる店では確実に売れているのだから—–。

※参考:

オンワードホールディングス http://www.onward-hd.co.jp/
ワールド          http://corp.world.co.jp/
TSIホールディングス     http://www.tsi-holdings.com/
三陽商会          http://www.sanyo-shokai.co.jp/
経済産業省         http://www.meti.go.jp/

(「アパレル・サプライチェーン研究会 報告書」)
日経МJ(2016年8月8日付/同8月10日付/同8月12日付/同8月15日付)