“玄関”から“街”へ。空港の「運営権民間委託」、テイクオフ。

 現在、国が管理する空港は国内で27あります。管理運営は、滑走路や駐機場などの“航空系事業”は国や自治体が、旅客ターミナルビルや関連施設などの“非航空系事業”は第三セクターや民間企業が、それぞれ個別に担っています。2012年度の収支状況では、非航空系事業の大半が黒字だったのに対し、航空系事業は9割に当たる24空港が赤字を計上(国交省調べ)。こういった空港の非効率的運営を打開しようと、政府は2013年に「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律」(民活空港運営法)を制定しました。土地などの所有権は国や自治体が保有したまま、航空系事業の運営を一定期間(30~50年間)民間事業者へ委託し、非航空系事業の運営と一体化しようというものです。つまり、民間の力で二つの財布を合体させることによって、空港経営の効率化を図り、新たな就航路線の誘致や増便、利用客数の拡大、さらには交流人口の増加に伴う地域振興も見込んだものです。なにより、民間のノウハウを活かした収益力の底上げは、航空機の着陸料引き下げにつながるばかりでなく、国の財政負担の軽減という側面も期待されています。

 なお、参画を希望する事業者としては、鉄道・旅行・商社・不動産・各地域の公共交通関連企業などが挙がっています。

 “民活空港”の第一号は、年間300万人が利用する東北の玄関口、「仙台空港」。2016年からの民営化を目指して入札に名乗りを挙げた主な企業は、三菱商事、楽天、東急グループ、イオン、豊田通商など(2014年12月現在)。今年の夏、最終的な運営事業者が決定される予定です。

 関西国際空港(関空)と大阪国際空港(伊丹)はセットで民営化される計画です。運営権料は年間約490億円、2015年度から45年契約で総額約2兆2,000億円という巨大プロジェクトとなります。

 次いで、福岡空港、新千歳国際空港。さらに、羽田、広島、高松、松山、熊本、鹿児島、那覇の各空港で運営権売却の検討が進んでいます。(順不同)

 空港民営化は、安倍政権の成長戦略の目玉の一つとして位置付けられ加速してきました。空港内の商業施設の拡充を図って集客力を高め、収益を改善する—–これまで“玄関”としての役割がメインだった空港が、そこに滞留する時間が増え、あるいはそこを目的に訪れる“街”としての機能を持ち始めます。

民間企業の経営能力が試されることになりそうです。

※参考:
国土交通省  https://www.mlit.go.jp/
日経МJ(2014年11月7日付)