現代ならではの市場です。「物忘れ」をカバーするための商品やサービス

地名や人の名前、漢字、物を置いた場所、約束の時間や場所、いま自分が何をするためにここに来たのか……年齢を重ねるにつれて「物忘れ」がひどくなり、会話の中でも“あれ”や“それ”ばかりになってしまうのは誰にでも起こりうる症状です。中高年に多いのは当然ですが、近年、20~30代の若い世代でも「物忘れ」を自覚する人が増えているといいます。

そんな背景もあり、物忘れに悩む人の“お助け”商品やサービスの需要が、ここにきて急速に高まっています。
代表的なアイテムが、携帯やキー、財布、TVリモコン、自転車などに取り付けて場所を探し出す「忘れ物防止タグ」の類。2016年に上陸した、米国発の「TrackR(トラッカール)」は、直径3cmほどの小型電子タグがスマホからの操作で探し物の位置を音と光で知らせるIoT製品で、世界的なヒットとなっています。昨年、カバン大手の[エース]が、同システムを搭載したキャリーケースを発売して話題となりました。

忘れ物の“定番”といえば、家の鍵。スマホが鍵になる[キュリオ]の「スマートロック」は、玄関ドアに取り付けるだけで工事不要。スマホ操作で施錠/解錠ができます。
恋人同士や夫婦間の記念日などを、つい忘れてしまうという人には、スマホアプリ「カップルズ」がおすすめ。二人で登録し、“忘れてはいけない日”を入力すると、カウントダウンや通知をしてくれるというもの。

肉体を鍛えるジムがあるなら、脳を鍛えるジムがあってもいいと、昨年オープンしたのが、脳トレーニングジム「ブレインフィットネス」(東京・恵比寿)。認知機能の維持・改善や認知症の発症リスクを減らすことを主眼に、脳を鍛える、あるいは休めるトレーニングを行っています。

また、食品で物忘れをカバーしようと、[ロッテ]から昨年発売されたのは、「歯につきにくいガム 記憶力を維持するタイプ」という機能性表示食品。中高年の記憶力維持の効果が見込めるという“イチョウ葉”の抽出物が配合されています。

「物忘れ」と「認知症」は違います。物忘れは、一度覚えた記憶を部分的に取り出せなくなる状態のことで、認知症は、記憶自体がすっぽりなくなることです。物忘れしない人はいませんし、ヒントさえあれば思い出すことができるレベルなら、心配には及びません。がんばって忘れないことを目指すのではなく、忘れにくくするための商品やサービスを活用するのが得策です。
記憶力低下への漠然とした不安感が、昔にはなかった、現代ならではの新種の消費を動かし始めているのは確かなようです。

※参考:

TrackR             https://www.thetrackr.com/
キュリオ            https://qrio.me/
カップルズ           https://couples.lv/
ブレインフィットネス      https://brain-fitness.jp/
ロッテ             http://www.lotte.co.jp/
日経MJ(2018年2月21日付)