安い・楽チン・乗り放題。賢いインバウンドに選ばれる、「バス旅」の魅力。

主に観光を目的に日本を訪れる外国人たちが“インバウンド”と呼ばれ、日本経済に多大な貢献をするようになって数年が経ちます。その数年間で、インバウンドの旅のスタイルが変わってきました。最近では、友人や家族といった個人単位で日本を訪れる人が急増。そういった、自分で航空券やホテルの手配をしながら海外旅行をするスタイルは「FIT」(エフアイティー=Foreign Independent Tour)と呼ばれており、2017年には訪日客全体の約70%と、ここ5年間で15%も増えています(観光庁)。

FITの特徴は、訪日経験のあるリピーターが多いこと。旅慣れた彼らは、定番の東京・大阪・京都といった“ゴールデンルート”では満足せず、よりディープな地方エリアへと興味が移ります。また、観光するときの、交通手段や宿泊、飲食などにかかる費用に関してシビアな点も特徴で、来日前や旅行中も、SNSやブログなどで情報収集して細かく計画を立てることは当たり前。そんな彼らにとっての新たな“旅の足”として定着しつつあるのが、安くて効率的な移動手段である「バス」です。

高速バス大手の[ウィラー]は、インバウンド専用の高速バス乗り放題乗車券「ジャパン・バス・パス」を販売(日本人の利用は不可)。3日間、5日間、7日間と3タイプのパスがあり(料金は1万円~1万5000円)、一日に何回乗ってもOKで有効期間は2カ月。利用者数は、5年間で約2.5倍に拡大しています。
九州各地や下関周辺の高速バスと一般路線バスなどが乗り放題となるフリーパスチケット「SUNQ(サンキュー)パス」は、4日間で1万4000円。17年度の利用者は、4年前に比べて8倍超に。そのほとんどがFIT客でした。
[九州産業交通HD]では昨秋、日帰り観光バスツアー「カバの旅」(「観光バス」の略)を販売。日本人対象のバスツアーをインバウンドに売り込むのは全国でも珍しいと注目されています。
また、ツアーにもかかわらず途中参加や途中離脱も可能、“ルートまたぎ”のコース変更もOKという型破りなインバウンド向け“乗り合い型”バスツアーを始めたのが、[JTB]。北海道から九州までの全48コースで、観光バスを路線バスのように定期巡回させるシステムです。

急速にFIT化するインバウンド市場にあって、鉄道の旅では体験できない、バスならではのルート設定の柔軟さや運賃の安さ、周遊観光の自由度の高さなどは、FIT客にとって大きな魅力となり得るはず。交通・観光事業者と自治体とがタッグを組んだ、次なる“ゴールデンルート”の開拓に期待したいものです。

※参考:

観光庁                  http://www.mlit.go.jp/kankocho/
ウィラー                 http://travel.willer.co.jp/
サンキューパス              http://www.sunqpass.jp/
九州産業交通ホールディングス       https://www.kyusanko.co.jp/
JTB                    https://www.jtb.co.jp/
日経МJ(2018年7月23日付/同10月15日付)
日本経済新聞(2018年10月4日付)