生身が演じるアニメの世界。年々盛り上がりを見せる「2.5次元ミュージカル」。

 2次元で描かれた日本のマンガやアニメなどを原作に、その世界観を3次元の舞台作品にショーアップしたライブエンターテインメントのことを、その中間の次元に位置するものとして「2.5次元ミュージカル」と呼ばれています。ファンの間で自然発生的に名付けられたという背景もうなずけるほど、とにかく構成も演出も徹底して原作を忠実に“立体化”。作品内のキャラクターたちが生身の姿で眼の前にいる感覚です。

 古くは、『ベルサイユのばら』(1974年)が「2.5次元ミュージカル」の原点といわれています。その後、1993年初演の『美少女戦士セーラームーン』、2000年の『HUNTER×HUNTER』など。そして2003年、『テニスの王子様』が大ヒットして一気に火が付き人気が定着しました。

 公演作品数もウナギ登りで、2010年に約30本だったものが、2013年に70本、2015年には100本を超えました。観客動員も右肩上がりの伸びで、2011年の約57万人から2015年には145万人に達しています(ぴあ総研)。

 客層は主に10~30代の女性。今まで、舞台やミュージカルといったものには興味がなかった人たちです。「2.5次元ミュージカル」は、出演俳優の知名度に左右されるテレビや大劇団のスターシステムとは異なり、作品中のキャラクターやストーリー自体にファンが付いているため、無名の若手俳優でも受け入れられる土壌があります。なによりキャラクターのイメージに合っていることが最優先で、今や人気俳優となった城田優さんや斎藤工さんなども「2.5次元ミュージカル」の“卒業生”です。

 とはいえ、これだけ人気が高まりながら、いまだに一般の認知度は高くはありません。そこで2014年、国内での「2.5次元ミュージカル」というジャンルの確立と、このコンテンツを世界へ発信することを目標に掲げ、「日本2.5次元ミュージカル協会」が設立されました。海外戦略の第一歩として、2015年、東京・渋谷に専用劇場「アイア2.5シアタートーキョー」をオープン。国際的な知名度のあるシブヤで、まずは外国人観光客を取り込む戦略で挑みます。

 日本の演劇市場に新風を呼び込むばかりか、世界でも十分に戦えるMade in JAPANの舞台コンテンツ、「2.5次元ミュージカル」。ライブエンターテインメントの新しいマーケットとして、これまでは海外作品にロイヤルティを払う一方でしたが、これからは求める側に舵を切る時代が訪れようとしています。

※参考:
ぴあ総研
http://www.pia.co.jp/
日本2.5次元ミュージカル協会
https://www.j25musical.jp/
日経MJ(2016年3月7日付)