時代のニーズは待ったなし。加速する、スーパーの「店舗」と「倉庫」の融合。

 これだけスマホやタブレット端末が浸透し、EC(電子商取引)が日常的になってくると、店舗(小売店)の存在意義や担うべき役割が変わってくるのも当然の流れといえます。これまで小売店は、商品を消費者の手に届ける“終着駅”でした。しかしいまや、単なる物流の“中間地点”、あるいは“配送拠点”としての役割が色濃く、様変わりしようとしています。

 昨春、業界初であり、[セブン&アイ・ホールディングス]としても初となるネットスーパー専用店舗「イトーヨーカドー西日暮里店」がオープンして話題となりました。1階の“路面販売店”と呼ばれる部分は、店舗はあるにはあるが、といった程度の規模。大部分を配送専用施設で占められています。全長600mのコンベアや専用ハンディターミナルなどの導入で、受注からピッキング、配送管理に至るまですべてシステム制御。一日の配送は、午前10時から午後11時30分まで業界最大の23便で、2,000件までの対応を可能にしました(既存店の約5倍)。

 米ウォルマート傘下の[西友]も、今年5月をメドにネット販売機能に特化した新タイプの店舗を出店します。1階を通常の食品スーパーとし(売場面積は標準店舗の約半分)、同等以上の広さの2階部分にネット販売用の在庫を保管する倉庫と配送作業スペースを併設。一日の配送能力を従来型店舗の3~4倍に引き上げます。ネット通販に精通したウォルマートグループにとっても、ネット専用の倉庫併設店舗は初の試みとなり注目されています。

 昨年8月には、[楽天]が、最短20分の即時配送サービス「楽びん」を始動しました(東京都内4区対象)。客と配送スタッフとシステム本部の三者をスマホを介して連携するシステムを開発。商品を積み込んだ専用配送車が対象エリアを巡回。商品の受け取りは、自宅やオフィスだけでなく、出先のお店や公園など、発注者が直接受け取れる場所ならどこへでも届けてくれます。

 [ローソン]は昨春、[佐川急便](SGホールディングス)と提携し、ネット通販などで購入した商品をローソンで24時間受け取り可能なサービスを開始。

 ソフトバンクグループの[SBイノベンチャー]は、ネットで購入したものならどの商品でも指定日・指定時間に受け取れるサービス「Scatch!(スキャッチ)」を、昨春、東京都内の4区で先行スタートしました。

 リアル店舗とネットの融合で、いつでもどこからでも業態間の垣根なく買い物ができるという“オムニチャネル”化が進んで店舗以外で購入商品が受け取れるようになったいま、小売業界には、店舗や物流の在り方そのものの見直しが急がれています。

※参考:
イトーヨーカ堂             http://www.itoyokado.co.jp/
西友                   http://www.seiyu.co.jp/
楽天                   http://rakuten.co.jp/
ローソン                 http://www.lawson.co.jp/
SGホールディングス          http://www.sg-hldgs.co.jp/
SBイノベンチャー            http://www.softbank.jp/
日経МJ(2015年10月5日付)