雑貨や家具を買うように。もっと気軽に、「アート」と暮らす。

美術館などで絵画を鑑賞するといった“知的体験”は日本人の好むところですが、一方で、アート作品を日々の暮らしに取り入れて楽しむということに関しては、残念ながら得意とは言い難いようです。世界のアート市場は約7兆円の巨大マーケットで(2018年/文化庁)、トップスリーの米国、中国、英国だけで8割以上を占めています。GDP世界ランク3位で、経済レベルではこれらの国と遜色ないにもかかわらず、日本はわずか3%程度にとどまっているという現実。アートを買って生活に取り入れる、という面では大きく水をあけられているようです。

しかし最近は日本でも、アートをインテリアの一つとして自宅に飾る人が増えてきています。アートを気軽に買うことができる“場”が増えてきたことが要因の一つといえそうです。
一般的なのが「ギャラリー(画廊)」や「百貨店」の絵画コーナーでの購入です。また、「アートフェア」というイベントでの購入も注目されています。アートの見本市のようなもので、お祭り感覚で気軽に参加できます。日本最大級の「アートフェア東京」では昨年、入場者数、売り上げ共に過去最高を記録しました。たくさんの作品を一気に見ることができ、意外な掘り出し物に巡り合うことも。
最近増えているのが、「ネット通販」で購入する方法。作家や価格、号数などで検索をかけることで、瞬時に作品を見比べることができる点がメリットです。専門のサイトも年々増加傾向です。

アート購入の目的としては、“投資”と“作家支援”という側面も見られます。
投資といっても、無名の若手アーティストの作品を買って、将来、有名になって作品の値が上がったらラッキー!という程度のお楽しみ感覚の“身の丈投資”です。
支援ということでは、[ピクスタ]が昨年、ネット上でアーティストの創作活動を支援する「mecelo(メセロ)」というプラットフォームを開設。月額100円から好きな作家を支援でき、お礼は作家のポストカードなど。
ほかにも、画家が買い手と直接交渉しながら落札する新しい形のオークションが生まれたり、京都の「スターバックス」では、美大生らによる現代アートの作品、80点以上を店内に展示。希望すれば買うこともできるといったように、アートを身近に感じてもらおうとする動きがあちこちで見られるようになりました。

“見る”から“買う”、そして“共に暮らす”へ。アートは、着実に私たちの生活に近づいていることを実感させられます。

参考:

文化庁                http://www.bunka.go.jp/
ピクスタ               https://pixta.jp/
スターバックスコーヒージャパン    http://www.starbucks.co.jp/
日経МJ(2019年1月7日付/同3月29日付)